健全なスポーツ育成を

スポーツには人・社会・国を動かす力があると述べましたが、たとえてみれば、スポーツは大きな生き物のようなものです。育て方を間違えると、フーリガンを生み出すなど、深刻な結果を招いてしまいますが、上手に育てれば、世代を問わずメリットをもたらす存在に成長します。東京がオリンピックという最高の舞台になることで、日本のスポーツが健やかに成長する機会を迎えているのです。
私の名刺には当初、「オリンピック招致委員会」の文字しか入っていませんでした。しかし今の名刺には「オリンピック・パラリンピック招致委員会」という名称が記されています。招致委員会のアスリート委員にはオリンピアンだけでなく、パラリンピアンの方も名を連ねています。障がい者スポーツをリハビリの一環にとどめることなく、トップスポーツとして認識し、国民全体でその激しさや楽しさを体感すれば、私たちがスポーツを楽しむ幅は広がります。同時に、障がい者の皆さんとともに暮らしていくための社会はもっと豊かになることでしょう。先にお話ししたスポーツ立国を目指す活動の中には、こうした豊かな社会を目指す活動も含まれています。オリンピック・パラリンピックの招致を勝ち取ることで、スポーツによる豊かな国づくりが一歩前に進むことでしょう。
好奇心をもってチャレンジしよう
2016年に東京オリンピック・パラリンピックを実現するためにはもう一段、世論の盛り上がりが必要です。2008年12月の世論調査では70.2%の方に開催を支持していただきました。10月の開催地決定に向けて、さらにもう一押し、世論の支持を得て、ぜひ日本中が皆で一つになって夢を見られるチャンスを手にしたいと思っています。
もちろんスポーツを仕事にしたいと考えるみなさんにとっても、オリンピック開催は最大のチャンスです。これを契機に日本のスポーツのあり方が変わりますから、時代の先を見ることでチャンスをつかめるでしょう。今のうちから好きなことにアクティブに取り組むことで、きっと自分が先取りできる面白い何かを見つけられるはずです。仕事は面白くなければ続きませんし、面白いと思える仕事をやっているほうがいいに決まっています。招致委員会の仕事は大変ですが、面白いから私も頑張れる。誰かに言われるがまま、勉強や仕事をこなすのではなく、自分から積極的にアクションしつづけることでチャンスはやってきます。みなさんも好奇心をもって、積極的にチャレンジを続けてください。
《 スポビズ・リーダーに聞く 》東京オリンピック・パラリンピック招致委員会事務総長
河野一郎
- (1)さまざまな角度からスポーツ支援に尽力
- (2)オリンピック招致をスポーツ変革の力に
- (3)東京オリンピックが世界経済に及ぼす効果
- (4)好奇心をもって取り組みチャンスをつかむ