現代人の「ウエルネス」を向上させる人材を育成

▲最新の機器を活用し、「健康運動」と「スポーツパフォーマンス」という2つの視点から、
人々のウエルネスを向上させるためのスポーツのあり方について、
医科学的、人文・社会科学的に総合的なアプローチで研究。

スポーツを人に近づける発想が求められる

濁川孝志教授▲学科長の濁川孝志教授の専門はウエルネス学、生きがい論など。スキーや登山が趣味。環境問題にも関心が高く、学生を連れてフィールドワークに出かけることも多い。

2008 年4 月、立教大学コミュニティ福祉学部内にスポーツウエルネス学科が新設された。

「ウエルネス」は一般的に「健康」と同意味にとらえられる場合が多いが、単に肉体的・精神的に病気ではない状態を指すだけでなく、「人生を豊かに過ごすための価値観や生きがい」といった意味を含む概念を指す。設立の背景を、学科長の濁川孝志教授は次のように語る。

「経済大国となった現在の日本では、明日の食べ物に困ったり、衛生状態が劣悪だったりということもなく、高いレベルの生活環境を維持できています。しかし同時に毎年3 万人以上が自殺している。価値観が多様化しすぎて個人が生きがいを持ちづらくなったためでしょう。『豊かになりたい』といったわかりやすい目標があった高度成長期と比べ、生きる目的を見失っている人が増えている気がします。つまり健康な身体状態を維持していても、ウエルネスのレベルは低いということ。逆に、余命3 カ月と宣告された人でも、しかるべき環境と生きがいがあれば、残りの人生を豊かに過ごすことができる。現代社会のあらゆる人々のウエルネスレベルの向上を学術的に追求し、スポーツを活用しながら福祉社会の実現を支える専門的知見および福祉マインドを持つ人材を育成すべく、本学科を新設しました」

スポーツを活用してこの命題に取り組む理由は、そもそもスポーツが楽しみや生きがいとなり、心身の健康状態を保つために有益だからだ。

しかし一般的に、「スポーツが生きがい」と聞くと、対象は一部の競技者に限られるのではないかと考える人も多いだろう。

「確かに、スポーツにはルールやレベルがあり、それに対して競技者がいかに技術を磨いて成果を上げるか、つまり『人がスポーツに近づく』という発想が一般的でした。

しかし現代は、例えば、障がいの有無にかかわらず誰もが参加できるスポーツと、そのための用具が盛んに開発されるようになっています。つまり『スポーツを人に近づける』という逆の発想です。これを“アダプテッド・スポーツ”と呼び、私たちも研究を進めています。あらゆる人々の心身両面のウエルネスを向上させていくために、今後ますます必要性が高まっていくでしょう」

学生自身がつくりあげていく学科

学科名に「スポーツ」を冠し、トップアスリート向けのカリキュラムも十分に整っているが、スポーツが得意な競技者やその指導者志望の学生だけが対象というわけではない。

「スポーツの実技科目もたくさん用意しており、希望者はいくらでも受講できますが、必修科目は運動方法学演習の中の2 つだけで、他大学のスポーツ系学科とは大きく異なります。本学科は、老若男女、トップアスリートから障がいのある人まで、『すべての人のウエルネスを向上させること』が目的であり、スポーツをその有力な手段と位置づけています。英文の学科名は“Department of Sport and Wellness” で、競技種目を表す“Sports”ではなく、遊び・気晴らしといった意味の“Sport”を使っていますが、そこに意味があるのです」

できたばかりの学科なので実績はこれからだが、逆にいえば可能性は限りなく広がっているといえる。

「教員も、学生も、未来のあるべき姿を模索しながら一緒につくっていこうと話しています。例えば、学生たちに公開シンポジウムの企画から運営まですべてを手がけさせるなど、『自分たちがつくる学科』という意識を植えつけていきたいですね」

卒業後の進路を意識して、インターンシップ先は、さまざまな行政法人やNPO、スポーツビジネス業界のほか、ヨーロッパ各国のサッカー協会、豪州ゴルフ協会など、海外にも広く開拓していく方針という。

卒業後は福祉・医療施設、地域スポーツ、各種スポーツビジネス、マスコミなど、健康・運動・スポーツを通じて、すべての人が豊かな生活を送れる社会システムづくりに寄与する諸領域での活躍が期待される。また、大学院も同時に開設されており、修士(スポーツウエルネス学)取得の体制も整った。

高齢社会の到来で、医療や介護費用など社会的負担の削減も重要課題である今の日本社会。卒業生が活躍できる場は、これからもどんどん広がっていくはずだ。

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