スポビズ企業の舞台裏や、そこで活躍するプロフェショナルをレポート スポビズ企業最前線

第1回

株式会社ブリヂストン

世界最高峰の舞台で戦い、次世代のタイヤづくりに挑む

(4)バランス感覚あふれる人材が理想

600Kgの車体、150Kmのタイヤ寿命

 巨額の投資でモータースポーツの世界で戦い続けるブリヂストンだが、レーシングタイヤの技術をすぐに市販用のタイヤに転用できるわけではない。たとえばF1のタイヤならば、600Kgの車体(一般の乗用車は1トン以上)で、わずか150Kmしかタイヤ寿命は持たない。市販用のものとは、そもそもの種類が異なるのだ。しかし、そうは言っても転用できる部分も少なくはないと浜島さんは話す。

 「グリップ力が高くて、摩耗が少なく、性能の落差も小さいという理想は、レーシングタイヤも市販用も同じです。なので、中に混入するカーボンの性質などは、レースの発想を市販用の製品へ活かすこともあります。また、ウェットタイヤの開発を通じて、理想的な溝の付け方などをコンピュータでシミュレーションして、それを市販車用のタイヤに転用するなんていうこともありますね」。

 タイヤの開発は決して一人で行うものではないし、モータースポーツ部門のスタッフだけで行うものでもないという。材料開発、設備担当、工場スタッフ、さらには原材料メーカーなどの外部スタッフ。すべてのメンバーの力が結集されることで、質の高いタイヤが生まれる。そのため勝つタイヤを開発するために、また売れるタイヤを開発するためには、新卒や転職者を問わず、他部門の人ともスムーズに対話ができる人材が求められている。採用を望むには、モータースポーツへの愛情とともに、周囲の意見を集約することができるディレクター的な能力も重要になってくる。

 「一緒に働きたいなと思うのは、バイタリティがあって、折衝ができるバランス感覚にあふれた人材ですね。レース用タイヤにしろ、市販用のタイヤにしろ、いろいろなセクションの人と力を合わせなければならないのは変わらないですから、一人よがりな人材では、この仕事は難しいのではないでしょうか。自分たちがターゲットにしていることを、分かりやすくかみ砕いて、他部署に説明できるかどうかがポイントですね」。

理想は走ってもすり減らないタイヤ

 「走る実験室」とも言うべきモータースポーツの経験を活かして、今後は社会に貢献していきたいというのが、浜島さんの思いだ。たとえば車両とタイヤの親和性を、実際にテスト走行するのではなく、高度なコンピュータシステムを使ってシミュレーションし、環境への負荷を軽減する。摩耗しづらいタイヤ、グリップ力の落ちないタイヤを研究する。そして究極的には、摩耗しないタイヤ(!)を作ってみたい。夢は大きく未来に向け広がっている。

 刺激に満ち、大いに注目を浴びるモータースポーツの現場から、タイヤの未来を切りひらく。スポーツという競争本能に満ちた「戦場」だからこそできる、手間暇かけた開発を活かして、BSは世界のタイヤ業界をリードしつづけている。

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