スポーツビジネス界を牽引するビジネスパーソン スポビズ・リーダーに聞く

球団の経営基盤を強化して健全な青少年の育成を

福岡ソフトバンクホークス株式会社代表取締役社長兼オーナー代行 笠井和彦

3.参考にならないメジャーリーグ

プロ野球も一般事業も仕組みは一緒

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 プロ野球参入を決めた当時、プロスポーツビジネス、プロ野球ビジネスは、ソフトバンクにとってもちろん未知の領域でしたが、実は私自身、それほどその後の球団経営に問題や不安を感じていませんでした。というのも、ビジネスの構造がプロ野球も一般のスポーツもそれほど変わらないからです。プロ野球の収入で考えなければならないのは、

  • ・どれだけお客様が入ってくれるか
  • ・どれだけ広告看板を集められるか
  • ・どれだけスーパーBOX(高額年間シート)を販売できるか
  • ・どれだけ球場内で飲食してもらえるか
  • ・どれだけグッズを買ってもらえるか

ということです。売るものこそ違いますが、経営や事業という意味では、一般のビジネスと考えなければならないことが何も変わりはありません。収益を上げ、コストを削減し、キャッシュフローを管理する。これはどんなビジネスでも同じです。そういう意味で、これまでの事業で培ってきたいろいろな発想を、球団経営でも活かすことができるだろう。たとえばコストを削減するために、中には無理に日本でやらずに中国やベトナムにアウトソーシングしても良い業務があるかもしれません。また、IT化を進めて人力コストを削減し、販路を拡大することで入場券の売上を増加させたい。そのためにはどんなデータを集め、どのように分析する必要があるのだろうか。そんなことを考えるのも、他の事業と何も変わりはないでしょう。プロ野球だからといって、ヘンに構えたりせず、これまでの経験を活かしながら知恵を絞っていくことが、これまでもこれからも重要だろうと考えています。

球場使用料、48億円vs1ドル

 知恵を絞っていく中には、アメリカのMLBを参考にすることもあるかもしれません。識者の方も、「日本の野球は企業の広告塔だ、しかしアメリカのMLBは違う」とおっしゃる方がいます。しかしメジャーリーグのビジネスは、参考になるようで、ならない部分が多いのも事実なのです。

 球場の賃料を例にとってみると、我々はヤフードームを使用するのに、年間48億円を支払っています。しかしアメリカでは多くの球場で自治体が負担していますので、たとえばミルウォーキーブリュワーズの年間賃料は、わずか1ドルです。その他の球団も、年間10ドルなど、ほとんどタダ同然の料金で球場を使用しており、さらに球場での飲食物の売上等はすべて球団に入ってくる仕組みになっています。球場建設費も自治体の負担分が大きく、1991年のシカゴ・ホワイトソックスから2012年のフロリダ・マーリンズに至るまで、30カ所程の球場で大規模改築や新設が、公的資金の下に行われています。過去10年だけを見ても、約2兆円もの公的資金が費やされているとの報告もあります。その背景には、プロ野球は健康的な娯楽であり、地域住民を楽しませてくれる文化的な装置である。球場で市民に楽しんでもらおうという発想があるのです。

 一方で日本は、札幌ドームや千葉マリンスタジアムなど、自治体から安く借りられている球団もありますが、それでもアメリカほどではありません。我が社でも、年間の使用料を30億円程度にしてくれれば、すぐに黒字化できるのですが…。これでは高い賃金でアメリカに選手を引き抜かれてしまうのも無理はありません。私自身は、これはWTO(世界貿易機関)のルール違反じゃないかと思っているぐらいです(苦笑)。

《 スポビズ・リーダーに聞く 》福岡ソフトバンクホークス株式会社代表取締役社長
兼オーナー代行 笠井和彦