スポーツ界各分野の第一線で活躍する先輩たちのキャリアパスを紹介 ~ スポビズ仕事人

専門知識と総合的な教養が大事。インターンなどのチャンスを活かして!!

帝京大学経済学部教授 大坪正則

3.総合的な教養が役立った新ビジネス

衛星放送のコンテンツを開拓

 アメリカで商社員としてビジネスを行いながら、存分にスポーツ文化に触れてきた私は、85年に帰国します。すでに石炭ビジネスは下降線をたどっていましたので、別事業への異動を検討されたのですが、そこで売りになったのがアメリカ文化に精通しているという点。新規で打ち上げられる通信衛星を利用したテレビメディアのコンテンツ、それにまつわる権利ビジネスを任されたのです。テレビ放送のコンテンツを考えた場合、必要になる部門が3つ、すぐに頭に浮かびました。一つはニュース、報道です。次いで、映画。さらにもう一つは、スポーツです。私はこの3つを衛星放送用のコンテンツにと、考えたのです。

 しかしニュース番組は、すでに日本のテレビ局が海外のニュースメディアと提携関係を結んでおり、新規で入り込む余地がないというのが現実で、すぐに断念しました。残ったのは映画とスポーツの2ジャンル。映画に関しては、私が勤めていた会社(伊藤忠商事)とサントリー、TBSの3社で500万ドルずつ出資して会社を設立し、アメリカの映画会社が制作する作品に投資を行いました。私はこの3社の取りまとめ役をしていましたが、1980年代後半のことで、日本の企業がアメリカの映画に直接投資を行うのは初めてのこと。日米の関係各所に大きなインパクトを与えました。

実績が新たな交流を生みだした

 スポーツについては、アメリカの4大スポーツ(MLB、NFL、NBA、NHL)の権利問題を調査。するとNBAがまだ、日本国内における権利が未着手の状態で、ビジネスの余地がありそうなことが分かりました。その後、「SpoBizガイドブック」のインタビューに記されているように、日本でのさまざまな権利を獲得することができ、その後の日本におけるNBAブームをお手伝いすることができました。NBAとの権利のやり取りで実績ができたおかげで、その後、他のスポーツ関係者との交流も活発になっていきました。他の4大スポーツの関係者とも互いに興味を持ち、相互交流を行いましたし、テニスやプロゴルフについては実際にさまざまな権利を獲得することもできました。

 私が、それまで専門外だったスポーツや映画の分野で、積極的にビジネスに参画できたのは、アメリカで多くの文化に触れていたことと決して無縁ではないと思います。ビジネスパーソンとしての専門的な見方でスポーツや文化を見ていたということもありますが、それ以上に美術館や博物館、コンサートホールなどで、総合的な教養を深められたことが、権利ビジネスを推進するにあたって大きな糧になったのです。今後、スポーツ経営、スポーツビジネスの世界を目指す学生や若いビジネスパーソンの方々には、ぜひ「専門的な知識」を深めると同時に、「総合的な教養」も広げていってもらいたいと思っています。そうすることが、きっと将来の皆さんのビジネスを助けてくれるに違いありません。

《 スポビズ仕事人 》帝京大学経済学部教授
大坪正則