スポーツ界各分野の第一線で活躍する先輩たちのキャリアパスを紹介 ~ スポビズ仕事人

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帝京大学経済学部教授 大坪正則

2.アメリカでつんだ貴重な体験

フットボールだ、メジャーリーグだ

 幼い頃からスポーツが大好きだった私ですが、別に学生の頃からスポーツを仕事にしようと考えていたわけではありません。仕事ももともとはスポーツはまったく関係のない分野のものだったのです。大学を卒業して就職した商社では「石炭部」に所属しており、アメリカとの取引を担当していました。1974年にアメリカ勤務を言い渡され、鉄鋼の町ピッツバーグにある石炭会社へ派遣されました。当時はNFLのピッツバーグパイレーツが非常に強い時代で、月曜日の朝は必ずアメリカンフットボールの話題から会話がスタートしていました。なので、アメフトには馴染みの薄かった私ですが、ルールも選手も知らなければ話にならないわけです。とにかく町中がパイレーツに夢中で、あいさつから皆がフットボールの話ですから、ごくごく自然にチームに愛着が湧いていくわけです。

 仕事の面では、東海岸のアパラチア山脈にある石炭会社へ行く機会が多くありました。山で掘った石炭を港へ運ぶわけですが、するとニューヨークが近くにあります。日本にいる頃から野球は大好きでしたから、メッツのトム・シーバーが投げるらしいと聞いて、メッツの試合を観に行ったり、ハンク・アーロンの最後の試合と聞いて、タクシーを飛ばして球場に駆けつけたりといった日々でした。仕事そのものはスポーツとは係わりのないものでしたが、アメリカで暮らす日々がスポーツに密接に関わっていたということはできると思います。

文化的装置としてのプロスポーツ

 ピッツバーグで仕事をした後、デンバーへの転勤を命じられました。こちらもNFLのブロンコスの熱狂的なファンが集まっている町です。私もごく自然な成り行きで、ブロンコスの試合を毎試合、観に行くようになっていました。アメリカでは、NFL、MLBといったスポーツばかりではなく、美術館や博物館にも足繁く通いましたし、オーケストラの演奏を聴きに行ったり、ミュージカルも観に行きました。アメリカで暮らして実感したのは、そうした文化的施設とスタジアムが何ら変わらない文化的装置として、町になくてはならないものとして存在しているということです。

 もちろんプロスポーツは入場料や広告料でお金を稼ぎますから、美術館や博物館などよりもビジネス的な性格が強いのは事実です。しかし住民の皆さんにとっては、チームはビジネスの道具というよりも町の誇り、シンボルといった意味合いが強く感じられているようで、公共財として存在していると言っても過言ではありませんでした。

 今でこそ日本のスポーツも地域に溶け込む努力をしていますが、当時は、日米の差は一体どこにあるのだろうか、どうやって埋めていったら良いのだろうか、そんなことを考えさせられたものです。

《 スポビズ仕事人 》帝京大学経済学部教授
大坪正則